【コラム】ケーブルの話

by MWrata

昨今のケーブルブーム、いささか落ち着いた感があるかと思いきや、各ブランドから個性的なケーブルが登場し続けています。

「新しいものが必ずしも良いという訳ではない」間違いなくそう思います。でも新しいモノは試してみないと!という訳で当店でも一通りケーブルはチェックしています。そんな中から当店で取り扱う事になったケーブルをピックアップし、個別にご紹介しながらサウンドの傾向に関して書いていきたいと思います。

Acoustic Revive GB-Triple-C-FM

担当も久しぶりにびっくりしたケーブル。以前ブログでも書きましたが、このケーブルの面白さはとにかく「歪が取れる」事にあると思います。ソリッドコア(いわゆる単線ケーブル)特有のスピード感や位相の良さはそのままに、単線の個性でもあり好みの分かれる「音の硬さ」「強さ」が和らいでいます。エレキギターはもちろん、ベースやキーボード(エレピ)アコースティック楽器全般全てにマッチします。ただし、本当に「ヒズミ」が取れ、ノイズも驚くほど無くなります。その為、例えばヴィンテージギター特有の心地よい濁り感や3弦あたりを弾いた時のコンプ感や音の詰まり感(これ良い意味での「音のつまり感」です)も無くなります。びっくり。ですので、メタルやジェントには良いけどハードロックには向かない?かもしれません。是非、この意味のわからない説明に疑いを持った皆さん、店頭でお試しください。

AC-2.0 Triple C

また、電源ケーブルもかなり強力に音色に影響します。エントリーモデルのAC-2.0 Triple Cですが、楽器に使用すると…その音色の変化に本当に驚きます。不要な歪み、耳障りな帯域を綺麗に整えてくれるイメージ。真空管アンプ、デジタル/アナログコンバーターを使用するモデリングアンプ系には最高です


VOVOX sonorus protect A Inst Cable 3.5m SS

もはやメジャーな存在となったVOVOXのソノラスケーブル。こちらもソリッドコアのケーブルで、ケーブル被膜は布製という外見からも特徴のあるケーブルです。それ以前の楽器向けソリッドコアケーブルに比べて軽やかでスピード感とツヤ感のバランスが良い印象。例えばBELDENなどと比べて「明らかに違う」と言う事が直ぐに理解できます。独特のアタックの音像があり、かなりストロングな印象。録音などで使うと明らかに音の明度がアップし、聞き取りやすくなります。特にベーシストはこのケーブルにハマるとなかなか他のケーブルに戻れなくなるのではないでしょうか?楽器だけでなく、マイクケーブル等もラインナップ。オススメはパワードスピーカーへの送りケーブル。是非お試しください。


VANDAMME SILVER SERIES Flat-Cap 90 Cable

こちらは音にこだわる皆さんであればご存知の英国ヴァンダムケーブル。なかでもスタジオクオリティーのシルバーシリーズはミッドレンジがしっかりとした特にギター…レスポール系にはバッチリのサウンドだと思います。難点はスタジオターゲットなので、ちょっとケーブルが硬い点。取り回しは良くないでしょう。それでもレビュー動画などでイマイチサウンドがしっくりこない時にこのケーブルを使うと「かっこいい音」に撮れる印象が強く、クリーンでもクランチでも音が立つのにウルさくない音色。パッシヴピックアップに最適で、高域がロスしません。リファレンスとして1本持っていて欲しいケーブルです。Hi-cap, Lo-capなど種類ありますが、当店では圧倒的にノーマルなFlat-Capが売れています。


Albedo Cable [B] or [M] type

既製品のベルデンケーブル(#8412)をベースに、チューニングを施しているアルベドのプーラシールド・シリーズBタイプと、モガミケーブルをベースにしているMタイプ。

猫も杓子も「belden 8412を使う」と言うブームを作ったのは間違いなくピートコーニッシュケーブルだと思います。しかし、他のブランド品やオリジナルでは少し音が「トロすぎる」というミュージシャンも多く、コーニッシュのようなスピード感があまり感じられませんでした。プーラシールドは#8412のどっしりとした中/低域の特性を活かしながら、スピード感が加わり、すっきりとした印象に変化。BELDENのクセをキープしつつ、現代的なレンジ感を加えたイメージ。非常に使いやすいと思います。独自のハンダ処理法により、生き生きとしたダイレクトな質感があります。また、オリジナルSE樹脂による接点の制振処理、プラグの温度処理、編組の処理の方法等によるオーディオ的解釈のチューニングを施していますが、その事に嫌味を感じさせないサウンド。ケーブル自体は「あり物」のケーブルですが、きちんとチーニングされており、1万円以下でこのクオリティーは他にないと思います。


Free The Tone CUI 6550 CABLE

フリーザトーンCUI6550は【インテグレーテッドシリーズ】のケーブル。インテグレーテッドシリーズは「プロフェショナルなサーキット・デザイン/基本設計などに加えて、サウンド自体に「個性」や「味わい」を持たせたフリーザトーンの新機軸」という事で、これまでどちらかといえばクセのないサウンドが持ち味だったフリーザートーンケーブルに、あえてクセを持たせています。音の重心を低くする事を目的としてデザインされています。
音の重心を下げた、とはいえローがもたつく感じが一切なく、どちらかといえば高域の音ヌケが秀逸だと思います。ということは、アンプ側やペダルなどで低域を補正しやすいという意味にもなると思います。また、柔らかく、非常に取り回ししやすいケーブルを採用しており、この辺りからはライブ現場等からのフィードバックを色濃く感じます。また、ベースで使用しても音のスピード感があるので「音が見えやすい」と思います。


ここまでのケーブルの話を読んでいただき、興味を持たれたケーブルはありましたか?ここに挙げたケーブルのクオリティーは、もはや「良し悪し」ではなく、それぞれが一定レベルを超えたクオリティーだと思います。そう、問題は音色です。

例えば、Acoustic ReviveとVOVOXはインストケーブルとしても世界最高レベルだと思います。しかしながら、例えばコイルコード(カールコード)の愛用者にはこのケーブルの「スピード感」は受け入れられないかもしれません。また、ハイエンドケーブルになればなるほど、「不要な歪み成分がなくなる」傾向にあります。ピュアサウンド、という事ですね。オールドロックのガッツのある音、そしてある種の「濁り感」を求めるプレイヤーの多くがカールコードが基本だった70年代のサウンドを好む傾向にあるように、そういった音を目指す方々にはこれらのケーブルはオススメできません。でも、70年代から活躍してるアーティストの皆さんは、これらのケーブルを「良い」といって選ぶ可能性が少なくありません。つまり、現在進行形/最先端の音、という印象です。

つまり、ケーブルひとつ取っても、お勧めする意味があるという事です。新しいからお勧めしているわけではなく、勧めたいお客様がいる、必要としているお客様がいる、という点から選定しております。

店頭には全てのケーブルのサンプル品が用意してあります。

現在ご愛用のケーブルを持ち込み、弾き比べる事も可能です。どうぞお試しください。

ケーブルのお話、今回は店舗にてご用意してあるシールドケーブルに焦点を当ててみました。ケーブルには楽器内配線用など、まだまだトピックがあります。おって書いていこうと思います。

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